当店の資料ではハーバート・ハットンの記録を見つける事が出来ませんでしたので、製造年代等は仕様や当時のバンブー・ロッド製造の状況等からの推測です。

ロッドのアクションはスペイの本場英国のロッドらしく重厚でトルクの高い印象です。ラインは＃８〜９をメインにその前後のサイズにも対応できるでしょう。トルクの高いロッドなので、風の中でも強い流れの中でも力強いパワーで快適なキャストを楽しむ事が出来るロッドです。本流や止水域での大型フライを使用して大型ヤマメやレインボーとファイトするのに適したモデルです。

このロッドは状態がかなり良好です。フェルールはハーデイに付いているタイプと極めて似ているロック・ファースト・タイプがセットされています。ストリッピングとトップには豪華なニッケル・シルバー・フレームと推測されるオレンジのメノウ・ガイドが取り付けられています。仕様から判断してもかなりデラックスなモデルとして作られたことが見て取れます。

当店の推測ではこれだけの仕様でインターミデイエット・ラップが無い事から接着剤の性能が高まった１９６０年代初めのモデルと思われます。ラッピングはほぼオリジナルで英国に於いてプロの手によるロッドのエポキシ塗料での全面塗装が行われた可能性が高いと考えられます（最初から全面塗装の可能性もありますが、エポキシ塗料の出現から考えると製造年代が新しくなり古い時代特有の豪華な仕様と合わなくなります）。

全てのガイドが新しいロッドのように大変綺麗で錆などは見られません。２か所ほどのガイドのスレッドが巻き直されているかもしれません。 ロッドの重量は約４９０グラム、グリップの全長は約６３ｃｍで大変ハンドリングに優れたデザインです。バットのグリップ上端部の対面外径は約１３．８ｍｍ、トップ・ガイド下の対面外径は約 ３ｍｍです。使用頻度も少ないようで非常に綺麗な状態のロッドです。

オリジナル・ケースとフェルール・キャップが１個付いています。３ピース２テイップなのでこれからも長くご使用になれます。当店お問い合わせ番号SA７６２。グレードは \４７，５００（税別\４４，０００）

ペゾンを思わせる長く独特のグリップのデザインです。当店の職人がレストアー後のテストで振ってみた処大変優れたデザインと品質の高いコルクとの印象を伝えてくれました。

下記に説明の通りバットのメス・フェルールを再接着と巻き直しをおこなってあります。大変綺麗な状態ながらお買得な価格になっているのはこの点を考慮した事によります。軽微な曲がり直しを行っています。フェルール差し込みの微小な調整も行いました。これ以外は大変綺麗なモデルですのでオリジナルのままです。

バットのメス・フェルール（写真最上段のフェルール）のスレッドに微小な断裂が見られたために取り外して検査してみました。

当時のブラス・フェルールは下端部の１５〜１８ｍｍ部分をスカート状に裂け目を入れて薄く削ってあります。スレッドの巻き上がりを綺麗にするためです（現在のニッケル・シルバー・タイプでもこの仕様のモデルがあります）。長期間の使用で薄くなったこの部分が取れてしまう事はしばしば起こります。写真のフェルールは、このロッドのものではありませんがハーデイの取り外したフラス・フェルールです。スレッドを取り外さない限り分かりませんが、かなりの確率でスカート部分が取れていと推測されます。それでも使用には支障を来した事は当店の知る限りありませんので、殆どのバンブー・ロッドはスカート部分が取れた状態で問題なく使用されていると推測されます。

このモデルはスレッドを取り外してこの長さ１５ｍｍ程のスカート部分が全て折れていました。強度を保つ肉厚の本体部分は問題がありませんので、念の為ケブラー等で下巻の上スレッドを２重（計３重）に巻いてあります。スカート部分はスレッドの巻きあがりを美しくする為に隙間を開けて裂け目が付いており薄く研磨されていますので補強の働きは本来少なく、肉厚の本体部分が支えています。フェルールの本体部分に支障が無い為ロッドの全長等にもオリジナルのままです。完成後修理した本職の者がキャストをしてテストを行いましたが問題はなかったとの事です。かなりのアナンテイーク・バンブー・ロッドがスカート部分が欠落した状態で支障なく使用されている事から、このモデルも問題なく通常の使用が続けられます。